7月になって [くらしの中で]
今年の関東地方は、6月の終わりにいきなり梅雨が明けてしまった。
それで、まだ心の用意が出来ないのに、夏である。
じめじめした雨が続く陽気から、いきなりカッと太陽が照りつけて暑くなるのだった。
自然のことゆえ、それはそれで仕方ないのだけれど、暑いのは疲れるなあ。
...などとブチブチ愚痴をこぼしつつ...暮らしていたら、以前頼んでいた漬物がやって来た。
箱を開けると、目に入る浅漬けの各種がいかにも涼しげであります。
...おおっ、やっと来ましたか...と、顔もほころんでくる。
それにしても、こういった漬物が、新鮮なままはるばる東京まで送られてくる時代。
...ほんと便利な時代になったなあ。
この漬物を作り、そして送ってくれたのは、山形県鶴岡市の「本長商店」である。
鶴岡市の西郊、大山で1908(明治41)年から漬物屋を続けている。
じつは昨年の今頃、夫婦して山形を訪れた際、この店に立ち寄り、漬物を各種買い求めた。
それが美味しくて、以降しばしば送ってもらっているのである。
鶴岡市のある庄内地方は、在来野菜という、江戸期より続く野菜が多く残っている。
それも、この地でしか採れない野菜が、今でも生産されているのである。
「本長商店」は、それらの在来野菜の保護育成に以前から係わって来た。
例えば一軒の農家で、細々と守り伝えられてきた野菜を丸ごと買い取り、漬物にしたり。
近年、在来野菜を見直す機運が高まり、生産量も上がってきたのは幸甚に堪えない。
本長の漬物も売れ行きが上がっているようで、それもまたなによりのことである。
この日送られてきた漬物を、翌朝、早速食卓に出して愉しんだ。
写真上は、民田ナスの浅漬けである。
民田ナスは、庄内を代表する在来野菜で、小ぶりながら身が締まり、漬物にぴったり。
からし漬けが有名で通年販売されているから、ご存知の方も多かろうと思う。
浅漬けは7月からひと月ほどの限定販売で、コリっとした食感と爽やかな風味がよろしい。
茄子紺というのだろうか、鮮やかなブルーの色合いが夏の朝の食卓に似合いである。
食べるたび、ああ、夏の美味しさだなあ、と思う。
昨年夏に庄内地方を旅行した折は、大山から山を越えて日本海岸に出た。
そこには、クラゲの飼育で有名な「加茂水族館」がある。
庄内に行くならぜひ...と見物した水族館は、さすがの展示だった。
クラゲというと、とりとめがない印象で、好きというほどではなかったのだが...
...ここでその面白さに気づき、今では、好きといってもいいかもしれない。
展示を見終わって順路の最後、大きな水槽いっぱいに漂うクラゲはきれいだった。
この夏、近くまでおいでになる機会があるなら、ぜひお立ち寄りを勧めたい。