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天目湯呑み [器を愉しむ]

 

 

    

 

 上の写真は、鎌田幸二(かまだ こうじ)さん作の「天目湯呑」である。

 

 鎌田さんは、天目(てんもく)という焼物を得意にしていて、酒器・食器を中心に作陶をしている方である。

 以前、ある陶器屋さんで個展を開いていたのに偶然行き当たり、彼の作品に魅了された。

 

 欲しいなあと思い...さんざん迷った挙げ句...そのときは酒杯をひとつ手に入れたのだった。

 その酒杯は、濃紺の地に銀色の小さな霰が散らされている模様で、見たところ地味だった。

 しかし、光が当たると、その濃紺がとても素晴らしい、深みのあるブルーに変わるのだった。

 

 大切なお客様には、その杯でおもてなしをするのが、いつしかわが家の習いとなった。

 「まるで夜空を眺めているようだな」...そう仰った方もいらしたっけ。

 漢詩にいう「夜光の盃」とは、或いはこういったものを指すのではないかと思った。

 「譲ってくれないか」と何度も請われたが、わたしにとっても大切な酒器、お断りするしかなかった。

 

    7975571.jpg

  

 昨秋、用事で京都に行ったとき、二年坂の陶器屋さんに、上の湯飲みが置いてあった。

 灯の下に置いてもらったら、わが家の酒杯と同じようなブルーが浮かび上がった。

 

 値段も聞かずに、この湯飲みを下さい、といっていた。

 さいわい、値段は思っていたほどでもなく、無事、わたしのところに来てもらうことになった。

 

 以後、毎日のお茶には、この湯呑みを使うことが多い。

 つい、眺め入ってしまうこともあって、そうして眺めたあとは、気分もリフレッシュしているみたい。

 湯呑みひとつのことなのに、不思議なものだなあ、と思う。


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MORIHANA

器って、出逢いモノだと思うのです。
いくら良いといわれるものでも、必ずしも
欲しいとは思わないですし。なぜか、買わずじまいの
まま時が過ぎてしまう場合も。。。

値段の価値ではなく、どのくらいシビレタかが大事で、
そんなモノたちに囲まれて暮らすことほど、幸福なことはないです。
お酒もたしなまれるようになったナツパパさんですから、
幸福度もさらに急上昇でしょう。杯、譲らなくて良かったですね。
天目茶碗…というと、なぜか、私はお茶のお稽古を思い出します。
by MORIHANA (2008-05-30 17:08) 

じゅんぺい

アップのお写真を見てびっくり!
すごく素敵な青ですね!!
by じゅんぺい (2008-05-30 19:06) 

ばん

「いい仕事してますね~~~」。誰かのセリフを思い出しました。
by ばん (2008-05-30 22:02) 

ナツパパ

あんぱんち~さん。
nice、ありがとうございました。
素敵な物がたくさんのブログですね。
なんだか欲しくなってしまいそうです(汗)
by ナツパパ (2008-05-31 09:39) 

ナツパパ

MORIHANAさん。
わたしも、本当にそう思います。
わたしや家族の生活にピッタリくるものって、作った方のお名前や経歴とは無関係。
自分が、そして家族がそれを好きになれるかどうか、が肝心だとつくづく思いますねえ。
そして、そういったものに出会えたときの嬉しさは格別なものがあります。

天目の盃はわたしも時々使うんです。
薄手で呑み心地も良いですよ(...なんて言うわけですよ、最近、このわたしが 笑)。
by ナツパパ (2008-05-31 09:47) 

ナツパパ

じゅんぺいさん。
普通にしていると、黒に近い濃紺の色合いなので、地味な感じなんです。
光をあてるとこういう素敵な紺色になります。
不思議な感じです。

それで、手に持って見ていると、あちち...なんて(笑)。


by ナツパパ (2008-05-31 09:53) 

ナツパパ

ばんさん。
ばんさんのブログの記事、思わず、ず~~~~~と拝見してしまいました。
面白かった、と言うより勉強になりました。
これからも伺わせて頂きますね。

この湯呑みは、作者が完全に自分の手に入っている技術で作っているものだと思います。
美術品ではなく、普段使いの工芸品には、その安定性が大切と思うんです。


by ナツパパ (2008-05-31 09:59) 

YAP

これは立派な湯呑みですね。
おいしいお茶がさらにおいしくなって、リラックスした時間になりそうです。
いいものはずっと長く使っていけますね。
by YAP (2008-05-31 10:14) 

ナツパパ

YAPさん。
仰るとおりだと思います。
良いもの、自分の気に入ったものは、多少値段が張っても長く使っていけます。
もちろん安い方が良いのですが(笑)、わたしの場合、値段が第一の物差しになり難くて...
でもね、一回限りの人生だ(by炎遊人さん)、と思うとつい。
by ナツパパ (2008-05-31 19:29) 

gillman

いいなぁ、油滴ですかね。光の加減で現れるコバルト色が素晴らしいですね。ぼくはこのぐい飲みで冷やをぐっといきたいです。


by gillman (2008-05-31 23:21) 

Oです

お茶碗、本当に涼しげでいいですね。天目茶碗はすばらしいですね。ナツパパサンハビールは陶器で飲まれますか。カップが陶製だと周りよりわずかに冷えるようです。夏は「呉春」以外のアルコールも試されると思うのでいかかでしょう。

by Oです (2008-06-01 08:53) 

ナツパパ

gillmanさん。
さて、油滴ではないと思うのですが...光の加減で現れる、この色合いが好きなんです。
盃でも、お酒を飲むことを休んでつい見てしまったりして...

by ナツパパ (2008-06-01 09:16) 

ナツパパ

Oさん。
ビールは、家で頂くことがないものですから、呑むとしたらガラスのコップかジョッキですねえ。
でも、これからの時期、涼しげな染付の磁器など目にもご馳走ですね。
良いことを伺いました。
食器屋さんで探してみることにしましょう。
by ナツパパ (2008-06-01 09:20)