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小樽「Baq」の思い出 [街あるき]

 

 

 

 20年も前になるだろうか、小樽に 「Baq」 という名前の店があった。

 主人が全国から選んだ食器のコーナーと喫茶スペースを持つ店だった。

 今ではあちこちに同じようなスタイルの店があるが、20年前はずいぶん斬新な店だった。

 食器は、磁器から陶器まで、使い勝手の良い、そしてどこか可愛らしい絵柄の物が多かった。

 

 

 

喫茶スペースでは、飲み物と簡単なケーキなど。

 

 特にコーヒーは、札幌山手にあった 「リヒト」 の豆を使って淹れてくれた。

 「リヒト」という店は、深炒りの自家焙煎で有名な店だった。

 美味しさで有名だったが、値段の高さでも有名な店だったのだ。

 そんな店の豆をたっぷり使って、一杯づつ淹れてくれるコーヒーが不味い筈もなく、

 それでいて値段は小樽市内の喫茶店と変わらなかったように覚えている。

 

 

 浮世離れした商売だが、その筈で、主人は主婦だった。

 自宅の敷地に別棟を建てて、そこを「Baq」にしたのである。

 だから、家庭の都合が優先されているらしく、「Baq」も不定期休の店だった。

 それでも店に行くと、いつも客が入っていたのだから、人気のある店だったのだろう。

 

 

 私と妻は、小樽を歩いていてこの店を知り、札幌に行くと店に顔を出すようになった。

 主人から教わったことがたくさんある。

 

 小樽の歴史、隠れた小樽の名所、人情、美味しい店、市場での良品選別方法等々。

 

 この店で教わった食器作りの作家とは、今でもつきあいが続いている。

 

 ある年、店を辞するとき、主人が 「もう止めなくちゃならないのよ、このお店」 と言った。

 記念にあげるわ、と下さったのが写真の土鈴である。  「アイヌの長老」だそうだ。

 以来、彼は長老の威厳を保ちつつ、わたしの部屋の本棚に居る。

 時々揺すってみる。  すると、カラコロと案外きれいな音がする。

 

 わたしは、静かだった昔の小樽を思い出す。


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コメント 4

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Fです。

アイヌの長老さん、なんとなくユーモラスなお顔立ちですね。
ところで店の名前はなんと読むんですか?
by Fです。 (2005-11-16 22:00) 

かーちん

ホントにユーモラスな愛嬌のあるお顔立ちですね。文鎮かと思いましたが、重くはないんですね。一度触らせてください。
by かーちん (2005-11-17 08:46) 

ナツパパ

Fさん。
「Baq」は、「ばく」と読みます。
なかなか良い店だったんですが、残念なことをしました。
建物はまだ残っているんですがね。
by ナツパパ (2005-11-17 17:40) 

ナツパパ

かーちんさん。
どうぞどうぞ、いつでもおこし下さい。
今や、わたしの部屋の主、みたいになっています。
by ナツパパ (2005-11-17 17:41)