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富士山分割 [山に登ろう]

 

 

    220.JPG

 

 もう2ヶ月程前になるのだが4月の或る日、S君と二人で新宿にある「鬼王神社」を訪れた(写真上)。

 「鬼王 (きおう)」とは面白い名前、一説には平将門信仰から来ているものらしい。

 新宿の「鬼王神社」は、元々熊野にあった「鬼王権現」を勧請してできた神社である。

 が、その後、熊野の鬼王権現はなくなってしまい、現在、「鬼王神社」は日本でここだけ。

 わたしたちは、ここに富士塚があると聞いて見物にやってきたのである。

 

 

 

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 「鬼王神社」は、厄除け福寿の鬼王様とも呼ばれ、鬼は力の象徴で、すべての災難を防ぐ存在としている。

 豆まきの時などは、「鬼はうち福はうち」と呼ばうそうだ。

 神輿にも鬼の面がついているとのこと、なかなかユニークな神社である。

 訪れた「鬼王神社」は、程々な広さの境内、早春の陽差しを浴びて静かに本殿が建っていた(写真上)。

 

 

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 目指すのは富士塚だが、本殿前の狛犬もなかなか素晴らしい出来のものだった。

 表情も豊かで、動きもある狛犬、なにより面白いのは双方の子どもたちである。

 珠を噛んだり、親のヒゲに噛みついたり...やんちゃぶりが見ていて微笑ましい。

 

 

 

  225.JPG

 

 さて、目指す富士塚は、本殿脇を奥に入ったところにあった(写真上)。

 小ぶりだが整った富士塚...そう思って近づいたらビックリ。

 参道の向かって右側にある小さな塚...のみならず左側も富士塚なのだった。

 参道で二つに分かれた富士塚...こういう形は初めてである。

 

  

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 参道左には、富士山の溶岩石と多くの石碑、そして1合目~5合目までの石碑が置かれていた。

 石碑と溶岩石はコンクリートで固められていたが、どう見ても富士塚の形ではない。

 石碑の置かれ方もバラバラだった。

 

 

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 右側は、左側に比べ、富士塚の形をなしている。

 富士山型に盛った溶岩石とその周りに富士講の石碑、頂上には浅間神社の石祠があった。

 しかし、こちらでも、登山道はなく、6~9合目の石碑が固まって置かれていた。

 如何にも不思議な富士塚である。

 

 この富士塚は、1930(昭和5)年に築造、というから比較的新しいものである。

 西久保の厄除け富士、として地域の皆さんから大切にされていたものらしい。

 

 しかし、1968(昭和43)年、神社本殿を再建する際、取り壊され、今の場所に置かれた。

 元は大きな富士塚だったらしく、そのままの大きさで移設する場所がなかったのだろう。

 それで...ということなのだろが、わたしのような富士塚ファンから見るととても哀しい姿である。

 

 なにより富士塚の約束が無視され、石碑なども無造作に置かれていることが辛い。

 せっかく一方を富士山型に盛ってくれたのだから、もう少し気を遣ってくれていたら...と思うのである。

 

 それでも、富士塚を完全に無くさず、こうやって残してくれたことに感謝しなければならないのだろう。

 残っていさえすれば、いつかまた富士塚を再興することもできる。

 いつか富士塚が再興され、本来の形で「西久保の厄除け富士」が地域の皆さんのところに戻りますように。

 そう願わずにはいられない富士塚だった。


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komaQ

小狛犬は、親にそっくりですネ。
表情もいいですね。

九州にはない尾っぽです。
by komaQ (2009-05-29 08:08) 

ナツパパ

komaQさん。
すみません、ホントご無沙汰しちゃって...コメントありがとうございます。

子どもの狛犬の表情が活き活きしていて見とれてしまいました。
親の方は、色々約束があってここまで活き活きとはできないのでしょう。
その分、作り手の思いが子どもに入っているように思います。
by ナツパパ (2009-05-29 08:19) 

hideyuki2007y

狛犬さん、久しぶりの(笑)正統派かと思いきや、子ども達が下のほうで遊んでいるのがかわいいですね。
by hideyuki2007y (2009-05-29 15:57) 

あんこ

やんちゃな子どもたちがなんともいいですね。
こんどはどんな狛犬さんだろう…と「狛犬・山に登ろう」
のタイトルがついていると楽しみです。
それにしても富士塚も前回のように登って遠くを見渡せる
ものからこんな風に半ば打ち捨てられたような哀jしい
ものまでさまざまですね。
当時の地域の人々の置かれていた状況がしのばれます。
by あんこ (2009-05-29 16:51) 

gop

調べると、
戦時中の空襲によって基盤がゆるみ、縮小・移動を繰り返した結果、
一合目~四合目と五合目~頂上の二つに分かれた姿になったという..
だそうで、歌舞伎町で飲んだ帰りに寄るとご利益があるでしょうか(^^
by gop (2009-05-29 17:54) 

myumyu

狛犬本当に良く見ると興味深い物がありますね、今回の狛犬、子供のやんちゃぶりがほほえましい狛犬ですね。
by myumyu (2009-05-29 19:40) 

飛狼

じゃれている子供は、見かけますが、ヒゲに咬み付いているのは、そういないでしょう~(笑)富士塚は、残念な形でしたね。
by 飛狼 (2009-05-29 21:32) 

みけり〜の

狛犬(子)がなんとも珍しいですね(^^♪
子供に添えられている親狛犬の手の感じもイイですね!
by みけり〜の (2009-05-29 21:49) 

YAP

お、富士山シリーズだ、と思って見てみると...
今回のはなかなか微妙ですね。
ありがたいのかそうでないのか。
これは見る人によっても判断が分かれるのでしょうね。
by YAP (2009-05-29 22:19) 

りゅう

富士塚ってどんなんになってるんだろう?って
かなり興味があります。
平家にはご縁があるのでちょっと行ってみようかと
思ったりしてます。
by りゅう (2009-05-29 22:28) 

ナツパパ

MORIHANAさん。
nice、ありがとうございました。
写真で物を撮るときにはホワイトボード、ということを今更知ったナツパパです。
B5サイズくらいの白いプラスティックボードが2~3枚あるだけで、ホントきれいに
写真が撮れるのですねえ。
で、さっそく身のまわりを見渡してみたのですが、白いボードがありません。
「東急ハンズ」に出かけて白いボードを見つけてこよう、と思案中の土曜日です。
...でも、妻が近所のスーパー3軒のチラシを熱読中...今日は運転手かも...うーむぅ(笑)
by ナツパパ (2009-05-30 08:03) 

ナツパパ

takemoviesさん。
nice、ありがとうございました。
新宿にはよく行くのですが、歌舞伎町界隈にはほとんど足を運びません。
お酒がほぼダメ、ということもあるのですけれど、どうもあの喧噪が苦手で。
20代の頃までは、お付き合いでよく行ったのですけどねえ。
やはり若くなければ...肉体的のみならず精神的にも...と思います。
同行のS君もお酒がダメなので、散歩の後にお酒、よりもケーキ...健全ですよねえ(笑)
by ナツパパ (2009-05-30 08:08) 

ナツパパ

hideyuki2007yさん。
動きがあって可愛らしい子どもたちでした。
悪ガキ風の顔つきもなかなか良い雰囲気ですね。
...息子が小さいときもこんなコトしてくれたなあ、と懐かしくなってしまいました。
by ナツパパ (2009-05-30 08:10) 

ナツパパ

あんこさん。
狛犬の多様さはホント面白いなあ、と思います。
とくに、まわりでじゃれつく子どもたちが良い表情をしていることが多いですね。
狛犬の様式が段々固まってきた時期以降、子どもの表情などに作り手が思いを
託すようになってきた、そんな感じを受けます。
わたしたちの先祖が持っていた優しさが現れているのかな、なんて思います。

富士山の山開きが毎年7月1日、その日にあわせて富士塚でも山開きのお祭りがあります。
普段入ることの出来ない富士塚もその日は解放されるんですよ。
富士塚フリークにとってのDデイが、今年もそろそろ近づいてきました。
by ナツパパ (2009-05-30 08:17) 

ナツパパ

gopさん。
おおっ、それは知りませんでした。
やはり戦争が影響していたのですねえ...残念なことです。
基盤が緩んでしまえば、そのまま置いておくのも危険、当時の地域の皆さんにとっては
仕方ない選択だったのかもしれません。
このような形でも、富士塚を残してくれたことに感謝するべきなのでしょう。

でも、築造当時は随分立派な富士塚だったそうですから、いつの日にか、
それを再現してくれたらなあ、という願いが消えないんですよねえ。
by ナツパパ (2009-05-30 08:21) 

ナツパパ

myumyuさん。
狛犬を、じっくり眺めてみると、なかなか面白いものだなあ、と思います。
でもね、東京の狛犬はまだまだ温和しい方なんですよ。
九州の狛犬のユニークさったら、ホント面白い狛犬が多いんですから。
わたしはいつか、九州遠征を、と企んでいるんです。
ただ、1週間じゃ無理、1ヶ月でどうにか主だったものくらいは、というくらいの多さですからねえ(溜息)
by ナツパパ (2009-05-30 08:26) 

ナツパパ

pianoさん。
nice、ありがとうございました。
神社毎に狛犬があり、総数でいったい何体になるのでしょう。
もちろんそのすべてを見尽くすことはできませんが、神社に寄った際は狛犬を
眺めることにしています。
でもね、正月に行った「今宮戎神社」はあまりの混雑で、つい見損なってしまいました。
残念...来春にはリベンジ、なんて思っています。
by ナツパパ (2009-05-30 08:30) 

ナツパパ

飛狼さん。
ヒゲに噛みつく子どもは、わたしも初めて見ました。
親の表情といい、なかなか和やかな良い雰囲気でしたねえ。
この和やかさは、作り手の優しさなんだろうなあ、と思います。
最近流行りの、中国製の狛犬にはない素晴らしさ、そう思います。

by ナツパパ (2009-05-30 08:34) 

ナツパパ

みけり~のさん。
最近は幼児虐待、だなんて言葉もよく聞きますけれど、日本人は昔から子どもに寛容な
民族として有名だったそうですね。
先の大戦中も、おっかない日本の兵隊さんは子どもに優しい、という定評があったとか。
この狛犬にもその特質が現れているみたいに思えます。
by ナツパパ (2009-05-30 08:38) 

ナツパパ

YAPさん。
おそらく止むに止まれぬ選択として、ここに富士塚を置いたのだと思います。
もう少し富士塚のお約束に従って欲しかったなあ、と思いますが、ご存じなかったのかも。
富士塚がここに移築されて40年ですか、考え方によってはまだ40年...
本来の姿に再現される可能性も残っていると思います。
できればそうして欲しいなあ、と思うんですけれど。
by ナツパパ (2009-05-30 08:42) 

ナツパパ

りゅうさん。
富士塚って東京周辺に結構あるんですよ。
100以上は残っていると思います。
それぞれ様々な形で、見ていて飽きません。
それに、地元の方々の愛されているのも特徴ですね。
おそらく子どもの頃富士塚で遊びまわった、その記憶が愛着を抱かせているのだろうと思います。
りゅうさんも機会がありましたらぜひ一度ご覧になってみて下さい。
by ナツパパ (2009-05-30 08:45) 

めぎ

2ヵ月前の木々の様子、葉っぱがほとんどなくてなんだか信じられないほどですね。
by めぎ (2009-05-30 08:54) 

ナツパパ

めぎさん。
そうなんですよねえ、4月初めですと、まだまだこのくらいの若葉でした。
春の訪れは、日に日に急、なのでしょう。
東京でこうなのですから、デュッセルドルフや札幌ではもっと、だと思います。
以前、4月始めに北ドイツを旅行したことがありましたが、たった一週間の日程だったのに、
来たときと去るとき、ドイツの木々の緑と日の長さ、あまりに違うのでビックリした憶えがあります。
by ナツパパ (2009-05-30 09:24) 

ナツパパ

今造ROWINGTEAMさん。
nice、ありがとうございました。
きれいな山容の山を、○○富士、と名付けているのをよく目にします。
富士山はきれいな山の象徴だったのかもしれませんね。
晴れた冬の日、真っ白な富士山を遠くに見つけると、本当にきれいだなあ、と思います。
by ナツパパ (2009-05-31 09:16) 

da-kura

歌舞伎町へ足をのばしちゃう!私なら!
by da-kura (2009-05-31 23:10) 

ナツパパ

da-kuraさん。
あはは...確かに近くですものねえ。
わたしも若かったら絶対そうなってますね、きっと。
50以上の身には、歌舞伎町は疲れちゃって...今行ったらまるで浦島さんですね。
花園饅頭か追分団子に行くかも...って、うーん、それもどうかなあ、と反省(笑)
by ナツパパ (2009-06-01 06:56) 

MORIHANA

ナツパパさん、ダンボールかしっかりとした厚紙に
白い紙を張るだけでも、代用できますよ。スケッチブックでも…。

家人は写真パネルを買ってきて、片面に銀のカッティング
シートを張ったものをガムテープで2枚つないで使ってますよ。
自立するので一組あると便利です。押さえで1枚ものがあれば
…完璧、です。
大きなカメラ屋さんへ行きますと、持ち運びに便利な
折りたたみ式のレフ板も各種サイズのものが。
私のカメラバッグには手鏡くらいの大きさの円形タイプを入れてます。
by MORIHANA (2009-06-01 13:19) 

ナツパパ

MORIHANAさん。
厚紙に白い紙を貼るのですね...メモメモ。
確かに良いアイディアです。
白い紙は、PC用のコピー用紙がありますからね、あとは厚紙ですね。
次回までには調達して、物撮りに挑むことにしましょう。

それにしても、手鏡くらいのレフ板...それすごく使い道がありそうですよ。
今度、カメラ店をのぞいてみることにします。
色々教えて下さり、ありがとうございました。
by ナツパパ (2009-06-01 19:16) 

ナツパパ

いっぷくさん。
nice、ありがとうございました。
富士塚を廻っていると、その多様さに驚きます。
富士山の形に土を盛る、そればかりではなくて、崖を富士山に見立てたりする場合もあります。
この「見立てる」という発想が良いなあ、と思うんです。
きっと想像力や遊び心が役に立つのだろうなあ、と思います。
by ナツパパ (2009-06-02 08:42) 

ナツパパ

くーぷらんさん。
nice、ありがとうございました。
神道という宗教に特徴的なのは、いわゆる教義がないことだそうですね。
教義がないので教典もない(...とわたしは勝手に解釈していますが)。
では神社に行ってなにをするか、というと先ず祈る、なにを祈るかは自分の思い次第、
と仰った方もいらっしゃいます。

わたしはその説に賛成で、神社の境内で清々しい気持ちになるのは嬉しいことです。
そしてそれぞれが自分のやり方で手を合わせる、それも好きです。
by ナツパパ (2009-06-02 08:51) 

ナツパパ

okayuさん。
nice、ありがとうございました。
散歩を始めて、初めのうちは神社はひと休みの場所だったんです。
ほら、木が茂っていて涼しいし、静かで椅子もありますし...
そうやって神社で休んでいるうち、だんだん神社自体が面白くなってしまいました。
今では、神社巡りが目的の散歩も多くなりました。
歳なのかなあ...といささか不安を感じるこの頃です(笑)
by ナツパパ (2009-06-04 07:56) 

ナツパパ

meさん。
nice、ありがとうございました。
新宿というと今手間名うての繁華街ですが、つい100年ちょっと前までは宿場町をのぞいて、
田んぼばかりの地だったとか。
大久保付近には神社も多く、それは地域の鎮守様なのでした。
ここ「鬼王神社」も本当は「鬼王稲荷神社」と言い、鬼王神社と稲荷神社が合体して出来ました。
双方地域の鎮守様だったそうですね。
by ナツパパ (2009-06-14 16:09) 

ナツパパ

きょうパパさん。
nice、ありがとうございました。
あちこちの富士山に行くことができて、様々な富士を見ることが出来ました。
こうやって二つに分かれたものははじめて。
いつか一つになってくれたらなあ、と思うのですが、さて。
by ナツパパ (2009-07-20 07:56) 

ナツパパ

kurakichiさん。
nice、ありがとうございました。
不思議な姿形の富士塚でしたが、由来を知ると、まあ残ってくれて良かった、と思います。
石碑と石祠、そして合目石があれば、いつかは再建できるかもしれないので。
パーツ自体は大変良くできていて、立派なものなのですがねえ。
by ナツパパ (2011-03-02 18:02)