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喰いたい放題 [妄想か偏見か]

  

       

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 わたしは食いしん坊なので、食べることが大好きである。

 もう一つ好きなことが読書。

 で、食べ物の本を読むことが、これまた大好きなんである。

 

 

 でもね、読んでいてホッとさせられる食べ物の本というのが、これが意外と少ないのである。

 

 概して、高級な料理や珍しい料理の報告、さもなければ蘊蓄の披露など...

 その手の内容はちょっと苦手なので、立ち読みで敬遠してしまう。

 

 

 さて、写真の本は、わたしが一番気に入っている本。

 著者は、小説家の色川武大氏。

 

 惜しくも1989年物故されたが、彼の小説は今でも色あせていないし、重みのある文体は独特の雰囲気がある。

 氏が阿佐田哲也という筆名で、麻雀競輪競艇などギャンブルの世界にまつわる記事を書いていたのは有名だ。

 その幅広い、そしておよそ堅気の人間では味わえない体験が、氏をして余人を以て代え難い小説家たらしめている。

 

 

 この「喰いたい放題」は、そんな色川氏が、自分の体験を元に食にまつわる事共を書き連ねた本。

 出てくる食べ物は上から下まで様々だが、いわゆる蘊蓄、聞きかじりは一切無い。

 全て、氏が体験した食べ物や氏の出会った人々のことが描かれている。

 

 しかし、そこは前にも書いたような経歴の色川氏であるから、出てくる事物や人物が生半可ではないのだ。

 読み進むうちに、わたしなどグイグイと色川氏の描く世界に引き込まれてしまった。

 落ち着いた語り口は、どこかの一室で、色川氏がわたしにお話しをしてくれているような感じである。

 

 ここで内容を紹介したいのだが、稚拙なわたしの文章では、その世界を再現出来るとも思えない。

 ぜひご一読を...と申し上げるのが精一杯である。

 集英社文庫から出ているので、手に入れるのは簡単だと思う。

 

 

 実は、わたしは長い間その集英社文庫版を愛読してきた。

 初版はハードカバーで、1984年潮出版社から出ている。

 欲しかったのだがこれが見つからない。

 長年懇意にしている古本屋でも見つからなかった。

 

 それが昨日、ふと見つけることが出来た...上の写真の本である。

 嬉しくてたまらず、記事にしてしまった。

 

 ハードカバー云々はともかく、内容はお薦めの本、ご一読をお勧めする次第である。


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イノウエ

イノウエです。
ふと思いました。最近は雑誌と専門誌しか読んでいませんでした。
読書しなくちゃいけないのです。
単行本は車関係だったりしてね(笑)
さて、明日は書店(古本屋)に行ってきます。
by イノウエ (2008-05-18 20:23) 

gop

私もお気に入りの作家のハードカバー初版本なんて見つけると買っちゃいますね。もちろんネットでは無く、古本屋で。
作家さんはグルメも多いですよね、池波正太郎さんや山口瞳さんのグルメ本は愛読書となっております。
by gop (2008-05-19 06:31) 

ナツパパ

MORIHANAさん。
niceを、ありがとうございました。
北海道はこれから初夏になって、お出かけには良い季節になりますね。
小樽散歩、いかがですか?
by ナツパパ (2008-05-19 08:26) 

ナツパパ

イノウエさん。
神保町などに行くと、最近古書店の専門化が進んでいるように思います。
交通関係、アニメコミック、の古書店が多く見られるようになりました。
そうしないとお客さんが入ってこないのかもしれません。
でも、そうやって一分野に特化された本屋さんがあるのは、わたしは助かってます。
by ナツパパ (2008-05-19 08:29) 

ナツパパ

gopさん。
仰るとおり、古書店で欲しかった本と出会う愉しさはたまらないものがあります。
あれこれ探し歩く時間が、わたしのような本好きには極楽なんです。
今回は、荻窪で発見しました。
あの町も結構多くの古書店があるんですよ。

以前、吉田健一氏の単行本全種が揃って出ていました。
良いなあ、と思って値段を聞いたら70万円...
恐れ入って早々に退散したおぼえがあります。
by ナツパパ (2008-05-19 08:34) 

MORIHANA

ナツパパさん、おはようございます。
札幌は既に初夏。ライラックも今が盛り、
木々の緑も日ごとに濃さを増しています。

この週末は、小樽ではなく、日本一の作付面積を
誇る、滝川の菜の花畑を見に行ってきました。
初夏の光を集めて咲き競う菜の花は、黄金の輝き。
美しい田園風景を堪能してきました。今の仕事が
一段落したら、記事にしようと思っています。

食べ物の本は、本当に難しいですね。
先達の名著、数々ありますが、最近はフードジャーナリスト、
平松洋子さんの本が気に入っています。文章だけでどうして、
あそこまでシズル感、ライブ感にあふれた世界を構築できるのか。
その根底には食べること、つくる人への愛と畏敬の思いが
あるように思えます。そんな本をいつか、上梓したいと考えています。
by MORIHANA (2008-05-19 09:39) 

ナツパパ

MORIHANAさん。
平松洋子さん、わたしも大好きです。
彼女の、明るいそして優しい眼差しは読んでいてホッとしますね。
物事を肯定的に捉える姿勢も得難いものだと思います。
わたしも出来ればそうありたいと思っています。

滝川の菜の花畑、先日ニュースで拝見しました。
黄色一色の景色は素晴らしかったのですが、実際に見るとまた迫力も違うのでしょうね。
ああ、どこかに行きたいなあ、と思う日々であります。
by ナツパパ (2008-05-20 08:33) 

12湾蛇

「色川武大氏」と「阿佐田哲也氏」が同一人物と言う事を知らなかったです。
阿佐田哲也氏の麻雀小説は沢山読みましたが・・・

おまけに鬼籍に入られた事も知らず、と言うか鬼籍に入られた後に私は小説を読んでいた事になります。

そんな事を踏まえて、改めて文庫を引っ張り出してきて読んでみようと思います。
by 12湾蛇 (2008-05-20 21:33) 

ナツパパ

12湾蛇さん。
ぜひお読みになって下さい。
色川氏の小説もそうですが、優れた小説随筆は再読三読に耐えるものだと思います。
読むたびに新しい発見がある文章は、読み手を幸せにしてくれます。
20代の頃からもう何十遍読み返したか分からないのにまだ読んでいて愉しい本があります。
わたしにとって宝物なんです。
by ナツパパ (2008-05-21 08:09) 

うんちく

出遅れました。
阿佐田哲也=「朝だ徹夜」だそうです。
くたばってしまえ=「双葉亭四迷」と似た様な話です。
 色川さんの作品は読んだ事が有りませんが阿佐田さんならマージャン放浪記位でしょうか。

  かなり以前阿川弘之氏の作品を探しておりました所神田では上下2刊で5千円程の値が付いてて諦めてたんですがフラリと立ち寄った荻窪の古本屋さんの軒先に置いてたダンボール箱の中で同じ本を発見。
 しかも上下で100円でした。
近頃はNET社会で情報が溢れており格安の掘り出し物を見つける事は至難の業ですけどね・・・

 
by うんちく (2008-05-31 09:48) 

ナツパパ

うんちくさん。
探していた本に出会えた時の嬉しさは格別なものがあります。
値段にかかわらず、胸がどきどきしますねえ...50をすぎても。

それはそうと、神保町あたりの古本屋さんは、最近なんだか割高な感じですね。
古書店巡りが一時期雑誌などで特集された余波かなあ、なんて思います。


by ナツパパ (2008-05-31 19:24)