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父の名前は... [狛犬さん見物]

 

 

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 今回は、S君と二人、神奈川県横須賀市の山の手、住宅街にある「神明社」にやってきた。

 横須賀は軍港として古くから栄えた街、港の背後は山になっていて住宅が広がっている。

 そこは狭い道が、大袈裟に言うなら、網の目のように通っていて、実に面白いところである。

 目指す「神明社」も、住宅街の細道を抜け、長い階段を登らなければならない(写真上)。

 

 

 

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 「神明社」はこの街の鎮守様、言ってはなんだが、本殿も小さく地味な神社である。

 連休中の休日、神社にも参道にも、わたしたち以外に人の姿はなかった。

 長い階段の途中に、今回のお目当て、一対の狛犬が建ってる(写真上)。

 

 

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 目許パッチリの狛犬で、阿吽に分かれた双方とも子どもを抱えている。

 若干出っ歯なところが面白く、また表情も豊かでなかなか魅力的な顔立ちである。

 愛嬌のあるところなど、見ていて飽きない。

 

 でも、この狛犬は、それとは別のところで特異な狛犬なのだった。

 

 

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 狛犬の台座を後ろから見ると、上の写真のサインが彫ってある。

 若干見難いのが申し訳ないが、英語で彫られたサインである。

 Carved by B.Clifiyer もしくは B.Cbifiyer と彫られたサイン、訳せば、Clifiyer彫刻となるだろうか。

 

 そう、この狛犬は、確認されたものでは日本で唯一、西洋人によって彫られた狛犬なのである。

 先達の皆さんの研究に寄れば、この狛犬は明治後期に造られたもの。

 Clifiyer氏は、明治末頃に日本にいらした方で、おそらくトルコ系の名前ではないかとのことである。

 

 明治後期の外国人が、どうして狛犬を彫ることになったのかは不明だが、狛犬に興味を持ったことは確か。

 そういう意味では、狛犬フリークの、わたしたちの大先輩にあたるのだろう。

 

 「神明社」の狛犬は、あるいは神社の関係者と個人的なつながりで製作の依頼があったのかも知れない。

 小さな街の神社なので、それが認められたからではないか。

 失礼ながら、当時の大きな神社では、外国人製作の狛犬が許可されるとは思えないので。

 

 明治後期からだから、もう100年はたっているだろう...

 「神明社」を守り続けたこの狛犬は、すっかり日本の風土に同化しているように思えた。

 

 

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gop

おはようございます。
こちらのBlogによると(おそらく)B.Elifiyeさんになってますね。
http://blog.livedoor.jp/kei_oh19/archives/51288847.html
経緯は全く手掛かかり無しとの事ですが。
韓国でもお寺で阿吽の狛犬を見かけましたし(山門には象の像?)
狛犬が来た道は色々とありそうですね。
by gop (2009-05-17 08:44) 

ナツパパ

MORIHANAさん。
nice、ありがとうございました。
先日北海道にお邪魔した折、じつは小樽「住吉神社」で面白い狛犬に会ったのでした。
記事にする予定をすっかり忘れてしまいそのまま...一昨日発掘しました(笑)
どうしよう、と思案中ですが、さて。
今夏北海道に伺う折(たぶん 汗)の記事にさりげなく紛れ込ませて...と思ったのですがね、
残念、写真に雪が写っていました(笑)
by ナツパパ (2009-05-17 10:13) 

ナツパパ

gopさん。
おはようございます。
この狛犬の情報、ありがとうございました。
名前の彫刻が、たぶん作者のサインをそのまま彫ったものだと思うのです。
筆記体、それも崩れた筆記体なので、判別が難しいところです。
謎の作者で、わたしも手がかり無し、推理だけで記事にしてしまいました。
台座は日本人の手になるようですので、彼が彫ったのは、狛犬本体だけみたいですね。

明治初期の製作と思っていましたが。明治44年とのこと。
記事を訂正させて頂きました。助かりました。
by ナツパパ (2009-05-17 10:18) 

ナツパパ

takemoviesさん。
nice、ありがとうございました。
横須賀は軍港の街で、さらにはカレー発祥の街なのだそうです。
日本海軍がイギリス海軍のレシピに従ってカレーを作ったのが始まりだとか。
「海軍カレー」を売る店がいくつもありました。
さらに「横須賀バーガー」なる商品もあって、在日米海軍のハンバーガーレシピで作るのだとか。
斯界では、佐世保バーガーが有名ですけれど、その流れなのかも知れませんね。

by ナツパパ (2009-05-17 10:24) 

あんこ

「吽」の歯が見えているのがとてもユーモラス。

「ちょっと、おとうさん」
「なんだよ」
っていうようなやり取りが聞こえてきそうな気がします。
守り神としては…うん ちょい弱っちいか(笑)
by あんこ (2009-05-17 11:19) 

hideyuki2007y

明治時代の外国人が狛犬を彫っていたとは発見ですね。横須賀ならでは。
狛犬の表情を彫るのも大変でしょうけど、名前の英文筆記体を石に彫るのも苦労したのではないかと思いました。
by hideyuki2007y (2009-05-17 11:22) 

甘党大王

まさか外国の方が狛犬を・・・・・(@_@;)
新鮮な驚きです\(◎o◎)/!
ニホンの民を見守り続けて下さって(*^。^*)♡ありがたいですね。
by 甘党大王 (2009-05-17 13:30) 

くーぷらん

沖縄風なのか東洋風なのか、それと西洋風なのか。
とても不思議な狛犬です。
by くーぷらん (2009-05-17 15:31) 

HIROMI

外国の方が作られたのですね。ふむ。外国といっても西洋というよりは、東南アジアの方の彫刻に似ているような気がします。
by HIROMI (2009-05-17 16:06) 

YAP

外国人の方の彫ったものが日本の神社にあるとは、驚きです。
サインを彫っているというところが、自己主張ですね。
by YAP (2009-05-17 18:56) 

myumyu

興味深い狛犬ですね、そう言われてみると顔がチョット外人ポイ気がするのは不思議です。
by myumyu (2009-05-17 19:51) 

いっぷく

珍しいものがあるんですね、どことなくちょっと変わっているかな、とは
感じましたが、まさが異国の人が彫ったとは驚きですね。

by いっぷく (2009-05-17 20:10) 

komaQ

西洋人の彫った狛犬さん・・・・?。
ロマンがありますね。
日本文化が好きになって狛犬さん彫ったんですかね?。

柔和な顔がいいですネ。
by komaQ (2009-05-17 22:43) 

ナツパパ

あんこさん。
愛嬌のある顔立ちの狛犬だと思います。
とくに眼のあたりがそういう感じになりますね。
狛犬というと威嚇する表情が多いのですが、この狛犬はどちらかというと穏やか系でしょう。
確かに守り神としては...仰るとおり、かも(笑)

by ナツパパ (2009-05-18 07:52) 

ナツパパ

hideyuki2007yさん。
確かに横須賀は当時軍港として賑わっていた地ですから、外国人も多かったのかも知れませんね。
外国人に狛犬を頼む、というのも破天荒なことですが、港町ならではの開明性も、
地域の人々にあったのでしょう。

サインはきっと、狛犬が出来上がったときに当人が自分で書いて、自分で彫ったものだと思います。
字に勢いが感じられます。

by ナツパパ (2009-05-18 07:57) 

ナツパパ

甘党大王さん。
先ず以て狛犬に興味を持ったことが驚き、そして自分で作ってみようとされたことも驚きです。
で、結局自分で彫ってしまうのですから、よほど器用な方だったのでしょうね。
台座は日本人の石工さんが作っているので、その人からアドバイスを受けたのかも
しれません。
出来てから100年以上、この狛犬もずいぶん色々なことを見てきたのでしょうね。
by ナツパパ (2009-05-18 08:01) 

ナツパパ

くーぷらんさん。
たぶん外国人の見た東洋風、なのだと思います。
なので、わたしたち日本人の眼から見ても少々エキゾチックに感じられるのかもしれませんよ。
仰るとおり、不思議な魅力のある狛犬でした。
by ナツパパ (2009-05-18 08:03) 

ナツパパ

HIROMIさん。
作者は日本に来る前、インドや東南アジアにいたのかもしれません。
彼の地も様々な魔除けの石像があるところですから、それを見ていたのかもしれませんね。
全体的に見ると、狛犬のお約束を忠実に守っているのですが、それでもどこか違って見えるのは、
細部にそういう影響があるからかもしれませんね。
by ナツパパ (2009-05-18 08:05) 

ナツパパ

YAPさん。
日本人作の狛犬ですと、作者名が入るとしても、どこか隅にそっと書かれていることが多いですね。
ここまで堂々とサインがあるのは、やはり西洋風かなあ、と思ってしまいますね。
出来上がって作者も嬉しかったのかなあ、と想像してしまいます。
英字のサインは、頼んだ寄進者も面白がっていたかもしれませんね。
by ナツパパ (2009-05-18 08:10) 

ナツパパ

myumyuさん。
宗教施設の像を、おそらく違う宗教の方に製作を依頼することは、先ず以て無いことでしょう。
とくに西洋の一神教では考えられないこと、そう思います。
その点、日本の神道は多神教なので、ファジーなのかもしれません。
そういうところ、わたしはたまらなく好きなのですが、この狛犬は、ファジーな良い面が出た、
そういう感じがしますねえ。
by ナツパパ (2009-05-18 08:14) 

ナツパパ

いっぷくさん。
全体で見ると伝統的な狛犬なのですが、受ける印象が少し違いますよね。
細部、とくに眼のあたりがずいぶん柔らかい感じがします。
それで、狛犬の表情も柔らかく、少し微笑んでいるような印象があるのかな、と思いました。
制作者はきっと優しい方だったのでしょうね。
by ナツパパ (2009-05-18 08:17) 

ナツパパ

da-kuraさん。
nice、ありがとうございました。
横須賀の街、とくに山の手の方はとても面白いところでした。
細い道が縦横に走っていて、途中で切れちゃったり、庭先を堂々と通ってみたり...
散歩していて飽きませんでしたねえ。
ただ、山に出来た住宅街なので、上り下りがきつくて閉口しましたけれど。
一番最初の写真、神社までの階段を見たときは、やはり大きく溜息をついてしまいましたっけ(笑)。
by ナツパパ (2009-05-18 08:22) 

ナツパパ

pianoさん。
nice、ありがとうございました。
山坂のある街で散歩をすると、東京のような平地の場合よりずいぶん運動になります。
また、景色も見通しが良くて爽快な気分になりますね。
それなら登山の方が...とも思うのですが、わたしはどうも単調な景色が苦手で(笑)
ゴミゴミしていても街中の方が好きなんですよねえ。
で、今回の横須賀散歩も愉しい思い出になりました。また行きたいと思っています。
by ナツパパ (2009-05-18 08:26) 

ナツパパ

komaQさん。
今では中国製の狛犬も増えて、一説によると最近出来た狛犬はほとんどが
中国製ですとか。
時代は変わったのだなあ、と溜息をつきたくなります。
なぜって、中国製の狛犬はどれも同じような姿形で、中国の獅子の影響を受けすぎて
いるように思われるので。
遊び心のある狛犬を作ってほしいなあ、と思うのですが、国産はきっと高いのでしょう。
ここでも価格競争かい、と溜息...でも、多少高くても一度作れば100年は持つでしょうしねえ。
by ナツパパ (2009-05-18 08:31) 

ナツパパ

今造ROWINGTEAMさん。
nice、ありがとうございました。
横須賀や横浜で感じることは、港町の開明性です。
新しいものや外から入ってくるものごとに対してオープン、という印象があります。
海の持つ開放感が街をそうさせているのでしょうか。

ところで、横須賀には「横須賀バーガー」なる食べ物が勢いを増しつつあります。
アメリカ海軍で出るハンバーガーと同じレシピ、とか。
今回は食べられなかったのですが、次回はぜひ食べて、記事にしたいなあ、とシタゴコロが(笑)
by ナツパパ (2009-05-18 08:37) 

飛狼

鬼太郎に出てきそうな(笑)
どういう経緯で、外国の方が、この狛犬さまを彫ったのか興味深いですね。
by 飛狼 (2009-05-18 17:59) 

ナツパパ

飛狼さん。
あっ、そうです、そんな感じのする、鬱蒼と木の生い茂った神社でした。
夜なんか怖いところかもしれませんよ。
入り口の狛犬も、なんかがあると動いちゃったりして...ブルブル(笑)

この狛犬の作者は、全くの謎、分からない人物なのだそうです。
狛犬を彫ったのも多分この一対だけだったのでしょうね。
ですので、商売でやっていた、というより趣味の延長で彫ったのかもしれませんね。
by ナツパパ (2009-05-19 07:47) 

me

ユニークな狛犬ですね。
日本で唯一ということですから大変珍しい事ですね。

by me (2009-05-24 01:21) 

ナツパパ

meさん。
そうなんです、確認されているものではこの狛犬だけなんですよ。
日本に滞在している家、狛犬の魅力目覚められた方なのかもしれません。
江戸時代までの狛犬はユニークな姿形のものが多いですから、目につきやすかったのかも。
今回、この狛犬を見ることができて本当に良かったと思います。
by ナツパパ (2009-05-24 15:09) 

ナツパパ

きょうパパさん。
nice、ありがとうございました。
by ナツパパ (2009-07-20 07:48)