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関宿の話 [街あるき]

 

 

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 上は千葉県の地図である。

 その千葉県の一番北に、まるで針のように飛び出している部分がある...なぜこうなったかは後ほど。

 その、針の先端部分、今は野田市になっているけれど、ちょっと前までは関宿(せきやど)町だった。

 先日、旧関宿町に用事があった。

 仕事をすませて、ふと見ると「関宿城博物館」という看板が...

 

 

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 関宿の町外れ、高台に、まるでお城のような建物がそびえている。そこが、「関宿城博物館」だった。

 関宿は、江戸時代は「関宿藩」たしか4万石の城下町である。

 この博物館には、関宿藩の歴史と、関宿の係わる水上運送の歴史が細かく展示されていた。

 

 

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 関東地方は広闊な平野だから、大きな河川が何本もゆったりと流れている。

 江戸時代以降、その河川を利用した水上輸送が盛んに行われていた。

 

 

 上の地図は、利根川と江戸川の地図だが、赤や緑の点は。河岸という名前の河川港である。

 江戸幕府は利根川の付け替えという大工事をしたり、港を整備したりしてきた。

 その結果、元禄時代には、これほどの港が出来たのだった。

 仙台の米、北上川流域からの物資は、一度銚子港に下ろされ、この川を使って、江戸に運ばれた。

 そのまま船で房総半島を回るより安全で確実な方法だったのだろう。

 

 

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 博物館の展示が上の写真。

 川で使われていた船の、1/5の模型があったり河岸の様子を再現したジオラマが展示されていた。

 船といっても、人間の模型と比べると、その大きさにびっくりする。

 こういう船が、様々な物資を積んで、利根川、江戸川、荒川などの河川を行き交っていたのだろう。

 

 

 河岸は、北は倉賀野(群馬県高崎市)辺りまで、他の中規模河川にも広がっていた。

 つまり、江戸時代の関東地方には、河川を使った物流の高速道路が整備されていた、ということなのかも知れない。

 野田や銚子の醤油、みりんなどの原料は、関東地方各地から船で運ばれていたようである。

 北関東の織物も同様だったと言うから、鉄道やトラックで輸送している現代と方法はあまり変わらない。

 

 

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 関宿城博物館から眺めた、利根川と江戸川の分岐点。

 奥から右に流れるのが利根川で、左に分かれるのが江戸川。

 この分岐点までが千葉県である。

 つまり、あの針は、利根川と江戸川の流れのためだったのである。

 

 

 銚子から江戸に行くには、ここ関宿まできて、ここから江戸川に入らなければならない。

 当時の関宿は、物流の、重要な中継拠点だったのだろう。

 おそらく、日に何十艘の船が行き交い、町も繁栄していたのだろうと思う。

 

 

 わたしが習った歴史では、明治維新になって日本は近代化し、交通網も整備された、ということだった。

 だが、我が国は北回り船や廻船だけではなく、江戸中期以降、全国的にしっかりした物流システムを持っていた、

 どうも、そう考えた方が良さそうである。

 また、そのシステムに見合うだけの量も動いていたようにおもう。

 江戸時代は、すでに近代、と捉えるべきなのかも知れないな、というのが博物館見学後の感想だった。


nice!(9)  コメント(15) 
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コメント 15

コメントの受付は締め切りました
YAP

失礼ながら、あまり名が通っていない街でも、こんな興味深いところがあるのですね。
いろいろと探せばたくさんのものが再発見できますね。
ナツパパさんのブログはきれいに記事が投稿できていますね。
私はまったくうまくいかず、しばらく静観することにしました。
by YAP (2008-03-02 19:38) 

かめむし

関宿は、子供の頃、友達が引っ越した町で、
よく遊びに行きました。牛がモーモー鳴いてたり
学校も木造で、なんて田舎なんだろうと思いましたが
今はずいぶん変わってしまったんでしょうね。
by かめむし (2008-03-03 06:00) 

ナツパパ

炎遊人さん。
niceを、ありがとうございました。
ようやく暖かさの戻ってきた東京ですが、花粉もまた盛大に飛び始めました。
今週がスギ花粉飛散のピークとか...花粉症のわたしには辛い一週間になりそうです。

by ナツパパ (2008-03-03 08:16) 

ナツパパ

YAPさん。
いわゆる地方自治体の「ハコもの」なんでしょうね。
立派な施設でした。
無駄?いえいえ、こういった施設に、地域の資料が収納されている事で
昔の事がよく分かりました。
多分赤字の施設だと思うのですが、これからも維持して貰いたいと思います。

この記事は、リニュウアル以前に下書きしていたものなんです。
今はどうなるか、まだ試していないので、わたしも不安です。
by ナツパパ (2008-03-03 08:20) 

ナツパパ

takagakiさん。
niceを、ありがとうございました。
いよいよ春ですね。
そちらでも梅の花がほころびはじめているのではありませんか?
冬が厳しかった今年は、特に春が待ち遠しいですね。
by ナツパパ (2008-03-03 08:22) 

ナツパパ

かめむしさん。
旧関宿町の中心は、依然と変わりなく静かな街並みでした。
なんとなく懐かしくて、わたし大好きなんですよ。

利根川を渡った境町には大きな複合スーパーが出来て、こちらはすごい活気です。
やはり車が便利なところですから、旧市内は寂れてしまうのかもしれませんね。
by ナツパパ (2008-03-03 08:25) 

ナツパパ

MORIHANAさん。
niceを、ありがとうございました。
3月下旬の妻と息子が札幌に帰省する事になりました。
二人してなんだか愉しそうです。
帰省の間に週末が入るので、わたしも...と思ったら用事が...(泣)

高校受験を控える今年は、夏も東京でしょう。
ああ...行きたいなあ、北海道。
by ナツパパ (2008-03-03 08:37) 

gop

世界中、河川に恵まれた地域に文化が根付くのは必然ですよね。
江戸と現代で決定的に異なるのは、昔は人がモノを効率的に使って
いたのに対し、現代は逆にモノに使われているって所でしょうか。

by gop (2008-03-03 12:17) 

炎遊人

コメントしたのに消えちゃってます。
ありゃぁ、まだ駄目ですね。 本調子になるまでいつまでかかるんでしょうか。
by 炎遊人 (2008-03-03 23:01) 

ナツパパ

xml_xslさん。
nice、ありがとうございました。
なにやらごたごた続きのソネットブログですね。
長い目で見る事が必要かもしれませんね。
by ナツパパ (2008-03-04 08:19) 

ナツパパ

gopさん。
そうですね、古代文明に限らず、昔からの都市には必ず大きな川が流れていますし。
船舶の運送コストは、陸上輸送の1万分の1だそうですね。
今でさえそうなのですから、昔はもっと差があったはずです。
それを上手く利用していた江戸時代は、やはり近代だったんだと思います。

>現代は逆にモノに使われている...
うーん、たしかに...わたしなんか、もうもう思い当たるところばかりで(笑)
by ナツパパ (2008-03-04 08:24) 

ナツパパ

gillmanさん。
niceを、ありがとうございました。
先日中国でB29(のコピー)を間近で見ました。
思ったより小さくて、でも、これが東京を...と思うと流石に嫌な気分になりましたっけ。

被害を受ける側に立って、初めてその人たちの恨みが判るものですね。
by ナツパパ (2008-03-04 08:26) 

ナツパパ

炎遊人さん。
すみません、何度もコメントにご苦労をおかけしてしまって。

ソネットブログの混乱は思ったより根が深そうですね。
思っていたより長引くかもしれません。
こちらも気を長くして...が良いのかもしれません。

by ナツパパ (2008-03-04 08:29) 

KANBE

ふーん面白そうな博物館ですね。
それに広々してて気持ちよさそうです。

by KANBE (2008-03-04 10:46) 

ナツパパ

KANBEさん。
この博物館、堤防の上に建っていて、下から眺めると小山の上に建っているようでした。
3階建ての天守閣(?)は、一番上が展望室になっていて、眺めが良かったですよ。
これから桜の季節などには賑わうのでしょう。
by ナツパパ (2008-03-05 08:15)