変わった形の急須 [器を愉しむ]
わたしは、仕事の合間に、というか気分転換にお茶を飲む。
これは、以前にも書きましたね。
いつもは「一保堂」の煎茶を愛用している(愛飲かな?)。
年に一度、静岡に住む友人から川根の煎茶を頂戴する。
手間をかけた、有機栽培の、という銘茶なのだそうで香りが高く味が濃い。
そしてなにより、この川根茶が素晴らしいのは、“根性”があることだ。
この煎茶が届くと、わたしは写真の急須を取り出して、お茶を淹れることにしている。
この急須は、「絞り出し急須」という名前のものである。
ふつうの急須は、本体に注ぎ口と茶漉しがついているが、この急須にはそれがない。
蓋を開けると、中は茶碗のようになっている。
どうやってお茶を淹れるかというと、蓋と本体が白い○のところで少し隙間が出来ている。
その白い○の箇所からお茶を注ぐのである。
茶漉しがなくても、茶の葉は湯飲みには流れない。
隙間を、よほど上手く作っているのだと思う。
お茶を湯飲みに注ぎおわると、次は、蓋を使って本体の茶葉を隅にグッと押し込む。
茶葉に残っていたお茶が滲みだしてくる。
お茶屋さんに聞くと、この最後の滲み出たお茶こそが、一番大切なエッセンスだそうだ。
普通の急須だと、湯飲みに注いで最後に出てくるポタポタをいつまでも待っているのだが、
この急須はそれを強制的にやってしまう。
いわば、エッセンスを絞り出す訳で、それが「絞り出し急須」という名前の由来なのである。
ヤワな茶葉だと、絞り出しているうちに葉がダメになり、そうなると2煎目は不味くなる。
“根性”のある茶葉だけが耐えて、2煎目も美味しいお茶を出してくれるのである。
この急須は、常滑焼きである。
「楽然」という名が入っている。
作者の名前だろう。
数年前、愛知県半田市のTという老舗のお茶屋さんで手に入れた。
小振りで(直径10センチ弱である)面白い形が気になり、ご主人に見せてもらい、
使い方も教えてもらったのである。
急須の値段はびっくりするほど安かった。
「この急須、いつ頃からあったのかなぁ。私も覚えてないんです。昭和20年代の末頃には、
もうあったんじゃないかな。そのころに付けた値段なんですよ、これは」
どうか大事に使ってやってください、とご主人がおっしゃった。
わたしもそのつもりである。
こんな急須…というかお茶の入れ方があるとは知りませんでした!!
絞り出す…ということは普通に入れるよりお茶の味が出るのでしょうか???
確かにやたらな(安い)茶葉では美味しくなさそうですね。
by じゅんぺい (2005-07-20 19:05)
じゅんぺいさん。
いつもコメントをありがとうございます。そして、nice!もありがとうございます。いつもより茶葉を多めに入れて、低い温度でゆっくりと入れています。
更に絞り出すので、お茶の味が濃く出るようです。
ただ、この急須は小振りなので、ほんのちょっとしか出ません。
大きめのぐい呑みに入るくらいです。でも、口の中が爽やかになりますよ。
by ナツパパ (2005-07-20 20:52)
絞り出し急須を検索していたら素敵な写真に惹かれてやって来ました。
備前焼でしょうか?
先週、京都のホテルの茶器で初めて絞り出し急須を知りました。
ステキな急須、これからも大切にして下さいね(^◇^)
by じゅんこ (2013-08-30 22:44)
じゅんこさん。
あ、この絞り出し急須は常滑焼なんですよ。
常滑特有の朱泥ではなく焼き締めで、たしかに備前の雰囲気ですね。
このとき、お茶屋さんには2客の絞り出し急須があって、どちらも素敵な出来映えで、
結局2客とも持ち帰ってきたのでした。
東日本大震災の揺れも無事で、今でも愉しんで使っているのですよ。
このときから比べると、使い込んだせいか、渋みがまして良い具合になってきました。
わたしの宝物です。
by ナツパパ (2013-09-07 13:57)