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能登一ノ宮駅跡 【日本一宮駅巡り 補遺】 [駅に行こう]

 

 

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 さて、今回訪れようと思うのは、能登一ノ宮駅である。

 正確には、能登一ノ宮駅跡...北陸鉄道能登線の駅だったところである。

 

 北陸鉄道能登線は、能登半島の西岸にあるJR七尾線羽咋駅から、西岸沿いに富来町の三明駅まで延びていた。

 全長25.5キロの路線は、全線にわたって人口の少ない海沿いを走っていたため、早い時期から経営が苦しかった。

 そのためか、1960年代には赤字が大きくなり、1972(昭和47)年6月廃止になったのである。

 

 廃止後35年以上、まだ線路や駅の跡が残っていると聞き、訪ねることにした。

 まずは、能登線の始発駅でもあった、JR七尾線羽咋駅前で記念の写真を撮ってみる(写真上)。

 

 

 

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 羽咋駅からしばらく北上し、能登線の線路跡に行ってみると、線路跡は自転車専用道路として残っていた(写真上)。

 能登線廃止後すぐ、線路跡は「羽咋厳門自転車道線」として整備が始まり、1981(昭和56)年に完成したのだという。

 旧能登線はほとんどそのまま自転車専用道に生まれ変わっているそうだ。

 

 

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 さて、羽咋駅から車で10分ほど、自転車道が広くなったところが「能登一ノ宮駅」跡だった(写真上)。

 ホームや駅舎などの遺構はすでに無く、ただ2本あった線路とホームの分だけ広くなっていた。

 

 

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 能登線が動いていた当時の写真と比べて見ると、ここが「能登一ノ宮駅」跡であることが分かる(写真上)。

 2本ある小径は線路の跡であろう...鳥居の位置から駅の場所を類推して写真を撮ってみた。

 

 ところで、昔の写真を見ると、列車に不似合いなほど長いホームが目につく。

 能登線には2つの収入源があって、一つは夏の海水浴、二つ目は能登国一の宮「気多大社」への初詣である。

 夏には「能登高浜駅」まで、正月には「能登一ノ宮駅」まで、金沢から直通の臨時列車が走っていた。

 ホームが長いのはそのためで、能登線の列車はどれも大変な混雑だったという話である。

 

 

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 写真上・上左、白い看板の立つあたりが駅舎跡である。

 昔の写真を見ると、線路を横切っている道路はなく、鳥居は駅舎の前に立っていた。

 つまり、「気多大社」へは、駅前から参道が始まっていたことになる。

 鳥居からは、「気多大社」まで、真っ直ぐに参道が伸びていた(写真上・下右)。

 

 

 

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 駅から参道を10分ほど歩くと、能登国一の宮「気多大社」に着く(写真上)。

 閑雅な雰囲気ながら、堂々とした構えはさすがに一の宮の風格である。

 簡素な鳥居の先に、玉砂利の広い参道が続いていた。

 

 

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 鳥居から100メートルほど、手水舎の先に神門があった...ここからが本殿の境内である。

 神門には巫女さんが立っていて、神社の説明とお詣りの順路を教えてくれた。

 ずいぶん神社にお詣りしてきたが、ここまで親切にして下さる神社は初めて。

 

 ここ「気多大社」は、社伝によると、崇神天皇の時代に本殿が建立され、2003年に創建2100年祭をしている。

 祭神は「大国主命」で、出雲から船でやって来てこの地を開き、神として鎮座したそうだ。

 平安時代の「延喜式」にも記されている古社で、代々の領主からも篤い信仰が寄せられていたそうである。

 

 

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 「気多大社」の本殿(写真上)。

 歴史を感じさせる作りの建物、背後の森は、加賀藩前田家の保護による社叢で、「入らずの森」になっている。

 国指定の天然記念物で、昔ながらの樹相が残る鎮守の森である。

 

 鬱蒼とした森と簡素ながら素晴らしい作りの本殿。

 神寂びた、という言葉が似合う雰囲気は、さすがに長い歴史を誇る神社、一の宮の風格であった。


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ナツパパ

ほりけんさん。
nice、ありがとうございました。
実際に電車の走っている駅を訪ねるのが目的で始めたこの「一宮駅巡り」なんですが、
そこを一巡したら、過去にあった一宮駅が気になって、今回訪ねました。
鉄道の跡って意外と残っているものなのですね。
線路のように細長い土地が残るのは分かる気がするのですが、駅のような
まとまった土地も残っているのは驚きました。
ちょっとマニアックな記事になってしまいましたが、愉しんで頂けましたら嬉しいです。
by ナツパパ (2009-09-22 08:45) 

いっぷく

新旧比較写真が興味深いですね。
個人的には不採算の路線でもどうにか生き残る方法はなかったのか
惜しまれますね。
by いっぷく (2009-09-22 14:22) 

manamana

過去にまでその足を伸ばされたんですね!
こうして駅名の縁あって、知らない土地の風景を拝見して、
なんだか不思議な感じがします。
ホーム跡が長いのに、昔の栄光の日々の名残があるあるんですね。
巫女さんが親切な神社というのも、
いい想い出ですね。
素晴らしい記事をありがとうございます。
by manamana (2009-09-22 16:25) 

YAP

廃線になってしまったというのは寂しいですが、線路跡を自転車道として使うというアイディアはひじょうにおもしろいですね。
当時の風景と比較したナツパパさんの写真も、わかりやすくていいですね。
地方の路線って、やはり利用客が少なくて維持が大変なのですね。
私の田舎も過疎地域みたいなところなので、実情はよくわかります。
by YAP (2009-09-22 19:20) 

tateichi

北陸も魅了的な土地ですね。「能登はいらんかいねえ」
坂本冬美のメロディがうかびます。

前回の岐阜高山で、観光客が熊に襲われたニュースを見ました。
怪我をされた方々は気の毒ですが、人間の手による自然破壊で、
自然界に生きる動物にも被害が出ている事も考えます。

by tateichi (2009-09-22 20:30) 

飛狼

おくがふかい一宮駅巡り@@
変わっていくのは、なんだか寂しい気がします。
それにしても立派な神社!歴史を感じさせますね。
by 飛狼 (2009-09-22 21:25) 

ナツパパ

MORIHANAさん。
nice、ありがとうございました。
ついに廃線跡にまで足を踏み込んでしまいました。
これを追求すると大変...とくに北海道など、もうもう何日あっても追いつかないほどでしょう。
で、とりあえず、ここ能登一ノ宮駅跡探訪で、廃線巡りはお休みにしようかな、と。
さて次はどこの駅に行こうかな、と愉しみに計画中ではあるのですが。
by ナツパパ (2009-09-23 10:22) 

ナツパパ

takemoviesさん。
nice、ありがとうございました。
今回の駅巡りは、現役の一宮駅ではないので、補遺としましたが、じつはあと一軒
(...というのかなあ、駅の数え方)一宮駅巡りの補遺があるんですよねえ。
まだ現役で活躍中の駅なのですが、ぜひそこにも行ってみたく...でも遠くて。
いずれは、と思っているのですが、さていつになりますかしら。
by ナツパパ (2009-09-23 10:25) 

ナツパパ

いっぷくさん。
能登一ノ宮駅跡には、大きな鳥居が目印として残っていましたので、場所の特定が楽でした。
そうでないと、ここかそこか、と結構悩む場合が多いので。
それにしても、廃線後37年ですか、残っているものなのですね。
それにビックリしましたっけ。

日本は急速に自動車の普及が進み、それで便利にはなったのですが、
いかにも放任政策だったように思います。
総合的な交通体系を整える余裕がなかったのか、その気がなかったのか、
いずれにしても、地方の公共交通システムは今や崩壊してしまいましたね。
崩壊の危機、じゃなくてすでに崩壊してしまった、と思う方が良いでしょう。
これを復活させるのはムリだろうなあ、と思います。
地方鉄道も、この先10年でほとんど姿を消すのじゃないかな、と悲観的に思っています。
by ナツパパ (2009-09-23 10:31) 

ナツパパ

manamanaさん。
一ノ宮駅巡りにたくさんのnice&コメント、ありがとうございました。
このシリーズもようやく一段落、ホッとしました。
改めて「駅に行こう」の記事を見てみると、どの駅も個性的で、良い雰囲気ですね。
これからもずっと残って欲しいなあ、と思いますが、あと少しで一つが無くなるわけで。
自分の中の思い出としても大切にしていきたいなあ、と思うばかりです。
さて、次はどこの駅に行こうかな。
by ナツパパ (2009-09-23 10:37) 

ナツパパ

YAPさん。
細長い線路の跡を自転車道として再利用する、というのはグッドアイディアだと思います。
周囲が畑ですとそのまま農地にできるのですが、それ以外では意外と使い道がないみたいで。
この自転車道は、舗装もきれい、雑草もなく、きれいに整備されていました。
ただ、人家の少ない所も通るので、夜はちょっとおっかなそうですねえ。

JRの本線と呼ばれている幹線も今や乗客源で大変そうです。
昔は何両も客車をつないで走っていた列車も、今やディーゼルカー一両きりだったりしますもの。
なんとか乗客を呼び戻せないかな、と思いますが、なかなか難しそうですね。
by ナツパパ (2009-09-23 10:42) 

ナツパパ

ハゲアメリカーノさん。
nice、ありがとうございました。
日本では斜陽の色合いが濃い鉄道ですが、お隣の中国ではまだまだ大活躍ですね。
一度乗ってきたいなあ、と思うのですが、寝台列車は大変だったよ、と聞きました。
どこかで体験したい、と願っていましたら、今度の旅行で乗れそう...楽しみです。
一度で十分、と思うか、また乗りたいなあ、と思うか、さてさて。
by ナツパパ (2009-09-23 10:45) 

ナツパパ

tateichiさん。
おっ、坂本冬美さんですか。
わたしは森昌子さんの「越冬ツバメ」なんかを思い出していましたっけ。
雨に濡れた能登の家並みは、良い雰囲気で、とても魅力的でした。
能登半島というと、七尾湾とか輪島とか、観光地も多いのですが、西岸の景色も
素晴らしいものでしたねえ。

今年は気候が不順で、山の食料はどうなるのでしょう。
食べ物が少なくなると、また動物が里に下りてきますものねえ。
彼らだって空腹に耐えかねてなんですから、一方的に排除するのも考えものでしょうし。
ただ、エサをやると習慣になってしまうし、となんか良い方法はないものでしょうか。
by ナツパパ (2009-09-23 10:51) 

ナツパパ

飛狼さん。
白木造りの鳥居や本殿が、海風に晒されて良い具合に古びていました。
きれいに彩色された社殿も立派なのですが、こういう古びた社殿の魅力も捨てがたく。
仰る通り、長い歴史を感じさせてくれる神社でした。
一ノ宮駅巡りもやっと一段落、わたしもホッとしています。
by ナツパパ (2009-09-23 10:54) 

gop

能登線は残念ながら未乗です、羽咋では七尾線と接続していたそうで。
私全く記憶に無いです(七尾線C56撮影に行ってた頃は既に廃線)
当時の写真もナツパパさんが撮られたのでしょうか?
by gop (2009-09-23 15:48) 

ナツパパ

今像ROWINGTEAMさん。
nice、ありがとうございました。
日本全国にあった地方私鉄は、今や風前の灯火状態です。
これだけクルマが普及してしまうと、やはり鉄道のような輸送機関は不便ですよね。
わたし個人的には、大きな車に一人だけ乗って、ガソリンを使って通勤、には違和感があります。
それは多分、わたしが東京在住だからでしょう。
パーク&ライド、という考えがヨーロッパにありますが、日本ではムリかなあ。
by ナツパパ (2009-09-24 07:50) 

ナツパパ

HIROMIさん。
nice、ありがとうございました。
津軽地方では弘南電鉄が元気でがんばっていますが、それでも経営が厳しいようですね。
今や鉄道の乗客は通学の学生さんが主流だとか。
鉄道好きのわたしには寂しいことです。
そういえば昔、大鰐から弘前中央まで、窓全開で夏の津軽平野をぶっ飛ばした
爽快感が忘れられませんねえ。
by ナツパパ (2009-09-24 07:54) 

ナツパパ

gopさん。
わたしも初めての訪問でした。
七尾線のC56は人気でわたしの友人も多く訪れていましたが、わたしはSLより地方私鉄が
好きで、そちらを追いかけていたのですが、ここは行けませんでした。
ああ、あの時行っておけば...というのは、鉄道関係では多くなりましたね。
残念なことだと思います。
by ナツパパ (2009-09-24 07:58) 

ナツパパ

pianoさん。
nice、ありがとうございました。
関西圏には古くからのお寺や神社が多いのですが、一ノ宮の名前がつく駅が無いんですよねえ。
京都や奈良などに由緒ある神社が多かったので、一ノ宮と威張ることが出来なかったのかなあ
などと想像してしまいます。
「大宮」という駅が京都に、「新宮」という駅が和歌山と兵庫にありますけれど。
by ナツパパ (2009-09-24 08:02) 

ナツパパ

JBOYさん。
nice、ありがとうございました。
世に鉄道遺産という言葉があるそうです。
明治大正からの駅舎であったり、施設であったり、なかなか多様なものがあるとか。
鉄道を文化として見よう、という動きは、わたしのような鉄道好きには好ましいものと
感じられますが、他の皆さんにはいかがかなあと思っていました。
ところが、古い駅舎など人気の観光スポットになっているのだそうですね。
鉄道施設が多くの人から受け入れられるのは嬉しいことです。
by ナツパパ (2009-09-25 07:52) 

ナツパパ

甘党大王さん。
nice、ありがとうございました。
旅行する崎のあれこれを予習するのが苦手なナツパパです。
前以て知ってしまうと、出会ったときの喜びが減ってしまうようで...などと言っていますが、
本当のところはただ面倒くさがりなんです。
夏に北陸に旅行したときも前もって調べておけば...ということがかなりありました。
これからは予習しなくちゃなあ、とその時は思ったのですが、さてさて。
のど元過ぎれば...とならないように気をつけなくちゃなりませんねえ。
by ナツパパ (2009-09-25 07:56) 

ナツパパ

めぎさん。
nice、ありがとうございました。
ドイツでもローカル線で廃止されるところがある、と聞きました。
総合的な交通政策が進んでいるヨーロッパでも廃止される線があるのだなあ、
といささか寂しくなりました。
ひるがえって日本です。
民主党の高速道路無料化でJRの貨物輸送はどうなってしまうのか気になります。
このままではおそらく大幅な減益、悪くすると壊滅的な打撃になりそうですので。
by ナツパパ (2009-09-26 09:31) 

ナツパパ

くーぷらんさん。
nice、ありがとうございました。
ここ能登一ノ宮駅跡には、夏に行きました。
高山~金沢~能登、と歩いて、それぞれの地域で建物や風土がこれほど違うのか、
とビックリしましたっけ。
その中でも、能登の風景が好きになりました。
また行きたいなあ、と思います。
by ナツパパ (2009-09-30 09:15) 

ひろころ

新旧の比較を見ていると、当時の賑わいが甦って見えるようです(^^*)
気持ち良いほど真っ直ぐな参道が美しい。
心がすーーっと澄んでいくような、厳かで清々しい神社ですね。
by ひろころ (2009-09-30 15:09) 

ナツパパ

ひろころさん。
ここには車で行ったのですが、思い立って、駅跡から参道を歩いて神社まで行きました。
古くからの街並み、森、そして気多大社の佇まい、どれもが懐かしい景色でしたねえ。
歩いていて気付いたのは、どこにも原色の看板がないこと。
それだけで心が和むものでしたし、その後で会った、巫女さんの緋袴がとても美しく
感じられましたっけ。
本当に良い所でした。
by ナツパパ (2009-10-01 08:36) 

ナツパパ

みけり~のさん。
nice、ありがとうございました。
古くからの街並みと昔ながらの神社、そして田畑や森の景色。
能登半島の西岸は、懐かしい風景が広がるところでした。
もう少し北上したら美しい海岸や観光地があったのですが、今回は時間が無くて...
次回に持ち越しとなりました。
そういえば、輪島にも行きたかったのになあ、と思ったりしています。
by ナツパパ (2009-10-04 08:55)